-フタバタウン-





ヒカリは顔を上げた。
頭上の時計は2時を示していた。
再び正面の窓ガラスに何かが当たる。

コツ

窓を開けると、階下の暗闇に見慣れた人影が居た。
「ヒカリ」
「何?」
黄色い頭の幼馴染みは、もう一度何かを窓に向かって投げようとしていたのか拳を振り上げていた。
ヒカリの部屋の明かりで照らされた顔は、いつも通り破顔していた。
時間も気にせず非常識な行動をとられるのも慣れている。この男は頭の中身も黄色い。

悪びれもせず、幼馴染み、ジュンは手の中の物を捨てて喋り出した。
捨てたのは石だった。
「テレビ見ただろ?」
「あなたが見ろって言ったから見た」
「ちょっと降りて来いよ」
言うなり、ジュンはすいと暗闇に消えてしまう。
ヒカリは暫くその場をじっと見つめた後、窓を閉め自室を出た。


階段を下りた居間には母親が居たが、気づく様子が無いので無視して家を出る。
扉を開けるとジュンは仁王立ちで待ち構えていた。
何がそんなに楽しいのかニヤニヤと笑いながら顔を近づけて来る。
「湖行こう!」
一瞬の間を置き、ヒカリは静かに玄関の扉を閉め、振り返る。
「何故?」
「探検だよ探検。さっきのテレビみたいに、俺達も珍しいポケモン見つけるんだ!
見つけたら俺とお前の二人で捕まえようぜ、楽しそうだろ?」
何故よりにもよって深夜に、子供二人きりで、そんな下らない思いつきを実行しようとしたのかはわからないが、やはりこれも慣れたことだった。
大きな目がヒカリを下から覗き込んで来るが、ヒカリは動じずに答えた。
「楽しそうね」
「だろ?」
ヒカリが薄く笑ったのを見て、ジュンは一層破顔し、嬉しそうに歩き出した。
ヒカリもその後ろをしずしずと歩く。
静かな森に囲まれた町は、明かりが少ない。
住宅地を離れ、道路と言う名の獣道に出れば一寸先は闇である。
しかし二人が足を踏み出すと、手前の地面はほのかな緑色の光をたたえた。












SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送